“風の谷 “は、テクノロジーをうまく使って「都市集約型の未来に代わるもの」を作ろうという運動です。日本の科学者、安宅和人氏がこのプロジェクトの創案者です。
宮崎駿監督の「風の谷のナウシカ」をご覧になったことはありますか?
このプロジェクト名の「風の谷」は、宮崎駿監督の作品からとられています。
このプロジェクトは、「風の谷」を私たちの現実世界に創り出そうとするものです。
安宅氏は次のように指摘しています。
いたるところが限界集落となって古くから人が住んできた集落が捨てられつつある。これは日本だけでなく、ヨーロッパやアメリカ、オーストラリアなどでも同じだ。この1-2世紀かけて、世界のどの国も人口は爆増してきたのに、だ。これは世界中のあらゆるところが都市に向かっていているということだが、このままでいいのか。このままでは映画ブレードランナーのように人間が都市にしか住めなくなり、郊外は全て捨てられてしまう未来に刻一刻と向かってしまう。そんな未来を生み出すために僕らは頑張ってきたのか。これが僕らが次の世代に残すべき未来なのか。今、データ×AIだとかそれ以外にも数多くのこれまででは不可能だったことを可能にするテクノロジーが一気に花開いているが、これらはそもそも人間を開放するためにあるのではないのか。これらをうまく使うことによって人間が自然と共に、豊かに生きる未来というのは検討できないのか、そうだ!「風の谷」だ!
風の谷は、宮崎駿が最初に作った映画の一つである「風の谷のナウシカ」に登場する理想郷の一つです。風の谷のナウシカ
“風の谷 “のコンセプトは以下です。
●前文
人間はもっと技術の力を使えば、自然と共に豊かに、人間らしく暮らすことが出来る空間を生み出せる。経済とテクノロジーが発展したいま、我々は機能的な社会を作り上げることに成功したが、自然との隔たりがある社会に住むようになり、人間らしい暮らしが失われつつある。これは現在生きる我々の幸福だけの問題ではない。これからの世代にとってのステキな未来をつくるための課題でもある。「風の谷」プロジェクトは、テクノロジーの力を使い倒し、自然と共に人間らしく豊かな暮らしを実現するための行動プロジェクトである。
風の谷」はどんなところか
- 良いコミュニティである以前に、良い場所である。ただし、結果的に良いコミュニティが生まれることは歓迎する。
- 人間が自然と共存する場所である。ただし、そのために最新テクノロジーを使い倒す。
- その土地の素材を活かした美しい場所である。ただし、美しさはその土地土地でまったく異なる。
- 水の音、鳥の声、森の息吹・・・自然を五感で感じられる場所である。ただし、砂漠でもかまわない。
- 高い建物も高速道路も目に入らない。自然が主役である。ただし、人工物の活用なくしてこの世界はつくれない。
「風の谷」はどうやってつくるか
- 国家や自治体に働きかけて実現させるものではない。ただし、行政の力を利用することを否定するものではない。
- 「風の谷」に共感する人の力が結集して出来上がるものである。ただし「風の谷」への共感以外は、価値観がばらばらでいい。
- 既存の村を立て直すのではなく、廃村を利用してゼロからつくる。ただし、完全な廃村である必要はない。
- 「風の谷」に決まった答えはない。やりながら創りだしていくもの。そのためには、行き詰ってもあきらめずにしつこくやる。ただし、無理はをしない。
- 「風の谷」を1つ創ることで、世界で1000の「風の谷」が生まれる可能性がある。ただし、世界に同じ「風の谷」は存在しない。
「風の谷」が大切にする精神
- 自然と共に豊かに人間らしい生活を営む価値観。ただし、「人間らしさ」は人ぞれぞれである。
- 多様性を尊び、教条的でないこと。ただし、まとまらなければならないことがある。
- コミュニティとしての魅力があること。ただし、人と交流する人も、一人で過ごしたい人も共存している。
- 既存の価値観を問い直すこと。ただし、現代社会に背を向けたヒッピー文化ではない。ロハスを広げたいわけでもない。
- 既得権益や過去の風習が蔓延らないこと。ただし、積み重ねた過去や歴史の存在を尊ぶ。
最後に
- 「風の谷」は観光地ではない。ただし、観光客が来ることを拒まない。
- 「風の谷」は風の流れがあり、匂いや色彩の豊かさを五感で感じられる空間である。ただし、谷がなくてもいい。